損害保険料とは、事故や火災などのもしもの時に備えて加入する損害保険の保険料を支払った時に使う勘定科目のことで、代表的な損害保険には、火災保険や自動車保険などがあります。
個人事業主の方でも事務所(自宅兼事務所)や自動車に損害保険料を支払っている方が多いと思いますが、それら保険料は損害保険料として経費にすることができます。
今回は、どのような保険料が損害保険料として経費にできて、経費にする時はどのように帳簿に付けておけば良いのかをお伝えしたいと思います。
この記事で分かること |
❶ 損害保険料として経費にできる保険 ❷ 損害保険料の家事按分のやり方 ❸ 損害保険料の帳簿の付け方 |
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個人事業主が損害保険料で経費にできる種類
それでは早速、どのような保険料が個人事業主でも経費にすることができるのかをお伝えしていきたいと思います。
経費にできる保険料の種類
個人事業主の方でも経費にできる保険料には、
- 火災保険
- 地震保険
- 自動車保険
- 自賠責保険
などの保険料があります。
経費にできるものは事業と関係あるもののみ
しかし、経費にできる保険料はあくまでも事業に関わる物に使った保険料だけです。
例えば、事業では一切使わない自動車の自動車保険料を経費として計上することはできません。また、下でご説明する生命保険なども、事業とは関係なく個人に対しての保険になりますので経費にはできないのです。
逆を言えば、少しでも事業に使っているのであれば経費にできる可能性があります。たとえ自宅であっても、個人事業主なら自宅で作業をしていることが多いと思います。
その場合、自宅で加入している火災保険なども一部を経費にすることができるのです。このことを家事按分と言い、後の項目でもう少し詳しくご説明したいと思います。
経費にはできない保険料の種類
先ほど簡単に触れましたが、経費にすることができない保険料には、
- 生命保険
- 学資保険
- 所得補償保険
などの個人的もしくは家族のための保険があります。
これらは事業とは関係ない支払いなので経費にすることができません。
個人的な保険料は控除がある
ただ、このような自分のために加入している保険は「生命保険料控除」で控除にすることができます。
会社員の頃にも年末調整で保険料控除証明書を提出していたと思いますが、個人事業主になっても控除証明書を提出して控除して確定申告すれば結果的に所得が下がりますので、経費と同じような効果をもたらします。
事業主向けの保険(共済)も控除対象のものがある
「もしもの時に」備えて加入する保険が生命保険や損害保険などになりますが、将来のために蓄えるための保険に加入したいという方も少なくないかと思います。
個人事業主の場合、小規模企業共済や個人型確定拠出年金といった、退職金や年金の代わりになるような保険(共済)にも加入することができるようになり、小規模企業共済等掛金控除として控除対象になっています。
控除による節税効果も大きいので、利益が出ていて資金を将来に向けて蓄えておきたいという方はぜひ検討してみてください。
【関連記事】
「小規模企業共済の控除による節税効果と控除の受け方」
【ちなみに】社会保険料も控除できる
ちなみに、加入が義務付けられていて、個人事業主であれば自分で収めている国民健康保険や国民年金の保険料にも控除があります。
年間通して10万円を超える金額で、ほとんどの方が支払っているでしょうから、ぜひ忘れずに控除を受けるようにしましょう。
【関連記事】
「個人事業主が知っておくべき社会保険の仕組みと保険料」
経費や控除にできる保険料のまとめ
色んな保険を例に出して、さらに経費にできたり控除できたりと、少しこんがらがってしまったと思いますので、代表的な保険料で経費にできるもの・控除できるものを一覧にしました。
保険の種類 | 経費 | 控除 |
火災保険 | 〇 | 〇 |
地震保険 | 〇 | 〇 |
自動車保険 | 〇 | × |
生命保険 | × | 〇 |
学資保険 | × | 〇 |
所得補償保険 | × | 〇 |
小規模企業共済 | × | 〇 |
個人型確定拠出年金 | × | 〇 |
社会保険料 | × | 〇 |
※経費にも控除にもできる保険料は経費と控除の2重で所得から差し引かないようにしましょう。
他にも色々な保険がありますが、個人事業主が加入するであろう代表的な保険をまとめると、上にように必要経費もしくは控除にすることができます。
繰り返しますが、火災保険や自動車保険などの損害保険と呼ばれる部類の保険は、事業に関係するのであれば必要経費にすることができますので、以下のようにして経費計上していくようにしましょう。
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損害保険料は家事按分が必要になる時もある
経費以外にも控除の話が出てきて少し混乱してしまったかもしれませんが、こちらでは、火災保険や自動車保険など損害保険料として経費にする時に気を付けることをお伝えしていきたいと思います。
事業兼プライベート用の損害保険でも一部を経費にできる
「事業で関わるもののみ経費にできる」と聞いて、「車はマイカーとして使っているし…」と、経費にできないと思ってしまった方も多いと思います。
しかし、他の経費と同じように、少しでもその車を事業で使っているのであれば、家事按分して一部を経費にすることができます。
例えば、年間5万円の自動車保険料を払っていたとして、その自動車の半分くらいを事業で使っていたとします。その場合、自動車保険料として払った費用も半分の2万5,000円が経費にできることになります。
もちろん損害保険料以外にも自動車を購入した時の費用や自宅家賃など、家事按分して経費にできるものはいくつもありますので、気になる方は以下の記事もご覧ください。
【関連記事】
「家事按分のやり方まとめ|家事按分できるもの・計算方法・記帳方法」
家事按分の割合は事業主が決める
一部を経費にできるとお伝えしましたが、その経費にする割合はどうやって決めるのか?という疑問が出てきますね。
家事按分で経費にする割合は事業主の方が決めます。
事業主からしてみれば、少しでも多く経費計上して所得を減らしておきたいところですが、経費にするには経費にしただけの理由や説明がなければなりません。
例えば、自動車保険の半分を経費にしたのに、実際はほとんど事業で使っていなかった(1~2割)とします。
場合によっては税務署から調査が入り、きちんと説明ができないと経費を多く計上していたとして修正させられることにもなります。
具体的な計算方法はないものの、使用回数や使用面積、走行距離など事業で使っているということを根拠を持って説明できるようにしておきましょう。
損害保険料を支払った時の帳簿の付け方
最後に、損害保険料を支払った時の帳簿の付け方について、いくつかのパターンを想定してご説明していきたいと思います。
全額経費にする時の記帳方法
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
損害保険料 | 50,000 | 預金 | 50,000 |
まず、事業用で事務所や自動車などの損害保険を契約していて、全額を損害保険料として経費にした場合は上のようになります。
仕訳の基本が分かっている方であればとくに難しいことは無い記帳方法ですね。
左側の貸方で損害保険料として経費に5万円を使ったこと、右側の貸方に預金から5万円が引かれたことを書きます。
家事按分して一部を経費にする時の記帳方法
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
損害保険料 | 25,000 | 預金 | 50,000 |
事業主貸 | 25,000 |
家事按分して一部を経費にした場合は上のようになります。
借方の勘定科目が2つに分かれます。「損害保険料」は経費として支払った分。「事業主貸」は、事業主のために支払った分で経費にはしないことを意味します。
このように家事按分をした時には事業主貸という勘定科目も出てきますので、一緒に覚えておくと良いでしょう。
先に数年分をまとめて支払った時の記帳方法
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
損害保険料 | 15,000 | 預金 | 30,000 |
前払費用 | 15,000 |
また、損害保険の中には数年分をまとめて支払う場合があります。
例えば、火災保険料を2年分(1年1万5,000円×2年=3万円)払ったとした場合、今年の保険料はその年の確定申告で経費にできますが、翌年の保険料は翌年経費にすることになります。
その場合、上のように帳簿に付けます。
今年経費にする分を損害保険料として経費にして、来年に来る越す分を「前払費用」で処理して経費にはしません。
そして、次の確定申告で経費にする時には、この前払費用から損害保険料を払ったという仕訳をして経費にします。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
損害保険料 | 15,000 | 前払費用 | 15,000 |
今回は、分かりやすいように年単位でご説明しましたが、念の途中で契約した場合は月額で割って計算することにもなるでしょう。数年分の費用を先に支払っていく時は、このような仕訳もしますので、覚えておくと良いです。
まとめ
今回は、個人事業主の方でも経費にできる損害保険料についてご説明しました。自動車保険や火災保険は、事業で使っている物に関係あれば、経費にすることができます。
また、損害保険ではありませんが、生命保険や学資保険などには控除もあって、所得を下げることができますので、忘れることなくしっかり経費計上や控除して頂ければと思います。
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