飲食店における回転率(かいてんりつ)とは、1日当たりで何回お客様が入れ替わったのかを示す数字です。同じ店の作りでも、この回転率2倍違うと単純に売上も2倍違ってきますので、売上アップを望むのであれば無視できない数字ですね。
また、同じような指標でどれくらいの席効率で客席が使われているかを数値化した客席稼働率も併せて覚えておきたいですね。
今回は、飲食店の回転率と客席稼働率にフォーカスを当ててみました。実際に自店に当てはめて計算してみたり、それぞれの数値を向上させるためのヒントをお伝えしたいと思います。
飲食店の売上は「集客×単価×回転率」で、この3つのバランスをいかにとるかが飲食店の売上を左右します。当たり前のことですが、売上を上げたいのならこの仕組みはとことん頭に入れて意識しましょう。
集客・単価についてはこちらの記事を併せてご覧ください。
集客に関して:「飲食店の集客術~新規顧客獲得のための上手な集客の仕方~」
単価に関して:「飲食店開業時の単価設定と単価アップの知っておくべきポイント」
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飲食店における回転数とは?回転率の重要性
回転率とは、文字通りお客さんが1日で何回転入れ替わったのかということです。
エリアにもよりますが客単価3,000円の居酒屋であれば平日は大体が1回転、週末は1.5回転くらいになると思います。
逆に立ち食いそばなどの業種は滞在率も短いので一日に10回転するお店もあります。
同じ飲食店でも業態・エリア・客単価・店舗の広さなどで回転数は違います。
開業前にエリアの状況や自身が出店する業態によって、回転率をある程度見極めて出店しないと、事業計画の数字とずれてきて最悪のケースに…なんてこともあり得ますので必ず押さえましょう。
そしてこの回転率が上がれば売上も上がりますし、裏を返せば回転率の低下は飲食店の売上を下げます。
回転率の計算方法
回転率の基本的な求め方は、
となります。
例えば、上の居酒屋の例で言うと、60席で平日に60人の来客があれば1回転。週末に90名の集客があれば1.5回転という計算ができますね。
立ち食いそばなどの回転が早い業態だと、10席で1日来店100名の10回転ということもあります。
回転率を高めるポイント
売上に直結しますので、回転率は上げられるだけ上げておきたいものですよね。回転率を上げるポイントを各業態ごとにあげてみました。
飲食店でも業態ごとに違いますので、ご自身のお店のタイプから参考にしてみてください。
【居酒屋・ダイニング向け】予約や集客の時間帯をコントロール
居酒屋やダイニング、レストランなどは予約の集客やお客様の入りの時間が大体決まっており、それを「ピーク帯」と呼ばれています。
週末などの繁忙日に関しては、このピーク帯の開始を早めて2回転目(二次会)のお客さんをいかに集客するかで売上がまるで違います。
なので、週末の予約のお客様に時間を早めていただけるようなアナウンスやクーポンなどの特典で誘導することにより、お客さんにもお得ですしお店側も二次会のお客様を逃すことなく売上に繋げることができます。
他にも週末は時間制を取るなど(制限し過ぎることは著者はあまりおすすめしません)があります。
逆に平日は集客自体がそこまでタイトにあるわけではないと思いますので、意識して欲しいのが、「時間帯ごとのターゲット」を意識することです。
上記のようにお客様を自店のコンセプトに沿った上で、時間帯ごとのターゲットを意識して「メニュー」「サービス」を提供してみると自ずと集客=回転率にもつながりますので是非一度考えてみてください。
【カフェ・定食屋のランチ向け】提供時間のスピード
このカテゴリーの飲食店は提供時間が命です。
いかに早い提供をするかが大事なので、必ずメニューに関してのクオリティと提供時間のバランスをとるかを考えましょう。
他には全席禁煙にするなど色々ありますが、基本的にはスピード提供が一番のポイントだと思います。
もともとランチの時間帯は会社員の方などは限られていますので、スピード提供によってお客様満足度も高められ、集客にもつながります。
【小売・テイクアウト業態向け】業務の効率化
こちらもランチと被りますが、「スピード提供」そしてオーダーや注文時の手間をいかに省きつつさばくかというポイントもあります。
短時間で売り上げを伸ばすために注文や会計処理にかかる時間を短縮することを意識しましょう。また、分かりにくいメニューだと、お客様が注文を決めるまでに時間がかかってしまいますので、目に入る位置にわかりやすく大きなメニューを掲示することで注文待ちのお客様からも見えるようにしましょう。
会計時のトラブルやもたつきも時間のロスになり回転率に影響しますので、混雑時でもスムーズな会計ができるよう従業員の教育も徹底しておきましょう。現状のレジがアナログなものを使用していたら、ぜひタブレットPOSレジなどに切り替えることをおすすめします。
分かりやすい会計機能や注文時、オーダーの簡略化で人件費などコストの部分、そしてスピーディなレジ捌きも可能になりますので是非検討にしてみてください。
回転数に関する注意すべきポイント
ただ単に回転数を上げることだけを意識してしまう事は避けましょう。
あくまでも飲食店の売上は「集客×単価×回転率」です。
回転率ばかり意識しすぎてしまうことで、
単価の下落と集客数の減少という問題点が出てきます。
それもそうですね。居酒屋などの追加オーダーで単価を伸ばしていく業態であれば、滞在時間が短くなることで単価が下がることも十分考えられるでしょう。
時間制で半ば強引に会計させられたり、コースメニューが次から次へと運ばれてきたのであれば、不満に思って次はもう行かないと思ってしまう方も少なくないでしょう。
お客様のニーズやターゲット層、エリアの状況、コンセプトなどに合わせて
「集客×単価×回転率」の「バランス」をとることが何よりも大事なのです。
もちろん目標としている売上を達成することは大事ですが、
- 本当にその単価で適しているのか?
- この集客数で適しているのか(下記の席稼働率とも関連)?
- 回転率(滞在時間)は適しているのか?
という、お客様目線のことを常に考えておけると良いですね。
客席稼働率とは?
忘れてはならない飲食店の売上構成でのもう一つの数値が客席稼働率です。
稼働率とは、飲食店の客席が実際にどれくらいの割合で使われているかを表す数字です。
最適な席数を作り、最適な人数で席を埋めていくことで効率的に売上も作っていけますのできちんと理解しておきましょう。
全席カウンターのラーメン屋などでは満席=100%稼働となりますが、2名卓や4名卓があるカフェや居酒屋などでは、相席などにして無理やり詰め込みでもしない限り満席=100%稼働になることも少ないかと思います。
2名席に1名でご案内することも、4名席に2名で座ってもらうこともあるからです。
例えば、全席4名席の店舗を全部2名でご案内して満席になった場合、実際には席は半分しか埋まっていないので、客席稼働率も半分の50%となります。
客席稼働率の計算方法
客席稼働率の基本的な計算方法は、
となります。
満席時ではなくても埋まっている卓だけでの計算も可能です。
例を出してみると、4名席15卓がある居酒屋が2名5組、3名5組、4名5組で満席になったとしましょう。来客数が合計で45名になりますね。
この場合の客席稼働率は75%になります。
客席稼働率の重要性と目安
この席稼働率を意識しているかしていないかでも売上にも影響してきます。
例えば4名席×15卓=60名の店舗で、客席稼働率を意識した場合(80%=48名ご案内)と、意識していない場合(60%=36名ご案内)とでは、1回転で12名の集客差が出ます。
もし客単価が3,000円だったとすると、36,000円の売上の違いです。週末で2回転でもすれば10万円近くの差額が出ることもあるのです。
一般的に、飲食店の稼働率は70%以上が好ましいと言われています。
60席であれば満卓時42名のお客さんがいるという事ですね。6名テーブルであれば4名以上で埋めることが理想だということです。
そもそも満席になりにくい平日などであればそこまで意識しなくても結構ですが、週末や繁忙期などのあらかじめ満席になるような場合はこの稼働率もしっかり意識しておきたいですね。
客席稼働率を上げるポイント
慣れない方にはちょっと難しい客席稼働率の考え方ですが、どのような所を意識して稼働率を上げていけるのでしょうか?
客席稼働率を上げるためのポイントについてまとめました。
ターゲットを明確にして一致させる
例えば、広告ではカップル向けのお店をアピールしていているのに店内は4~6名の広めのテーブルばかりあったとしたらどうでしょうか?
必然的に席稼働率も下がりそうですね。
この場合、ターゲットに適した席の大きさに変更するか、設備上難しいようであればカップル向けから4~6名の少人数向けのコースやメニューなどを打ち出していくなどの方法もあります。
客席の工夫
主に開業時の話になりますが、オープンのテーブル席のテーブル同士をくっつけたり分けられたりできるようなレイアウトをとると稼働率をある程度操作できます。
例えば、基本的には2名がけのテーブル席で作っていた場合、上記のようなカップル向けのお店でも稼働率は上げられますし、大人数が来た場合もテーブルをくっつけてご案内することもできます。
かなり臨機応変にできるようになるので、客席稼働率も上がってくるでしょう。
席誘導の工夫
来店時にお客様の人数を確認し適正なテーブルにご案内するという事です。
ただ、通りかかったスタッフがその都度ご案内していたらごちゃごちゃしてしまいますので、ある程度の大きさの店舗の場合、席の空き状況と稼働状況、また上の回転率のためにも来店時間や退店目安時間を把握して指示を出せる司令塔的な人物を1人付けても良いでしょう。
お伝えのように回転率と客席稼働率だけで1日の売上が10万円近く違う場合もありますので、スタッフを1名多めに配置しても利益が出るかもしれません。
客席稼働率に関しての注意すべきポイント
こちらでも集客と単価とのバランスが大事ですね。
単価の良いお店でぎゅうぎゅうの席に通されたら割に合わないと思ってしまいますよね。次は来たくないと集客にも影響します。
反対に稼働率が良くなくても(席が広くても)その分単価でカバーすることもできます。
上でもお伝えしたように、お客さんがどう思うか?ということを考えながら、今回の数字的なことも考えていくことで売上も上げつつ良いお店ができていくと思います。
まとめ
今回は飲食店の回転率と稼働率に関してお伝えしていただきました。
回転率と稼働率は売上にも大きく関わってきますが、大規模な店内レイアウト変更やスタッフ教育をしなくても、日々の営業から分析してちょっとずつ改善していくだけでも向上していく項目でもあります。
すでにお店を営業されている方は今日からでもできる内容ですので、参考にしていただければと思います。
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