会社員時代は健康保険も強制的に加入していたと思いますが、個人事業主になったら健康保険も自身で加入しなくてはなりません。
このような国の制度や税金周りの手続きは直接売上に関わってくることでもないのでなかなか手が付けられないでいる方も多いかと思います。
しかし、毎年払う健康保険料は所得の10%程度とかなり高額なものです(国民健康保険の場合)。しかも、もしもの事態で怪我や病気になってしまった時の保障は会社員よりも手薄です。
会社員時代との保障や保険料の違いをしっかりと理解しておき、賢く保険料を抑えておきたいところですね。
今回は、個人事業主と健康保険について加入方法や保険料の計算方法、保険料を抑えるポイントなどをお伝えしていきたいと思います。
この記事で分かること |
❶ 個人事業主が加入する健康保険の種類 ❷ 個人事業主と会社員の健康保険の違い ❸ 健康保険料の計算方法 |
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個人事業主が加入する健康保険の種類
まず、健康保険といっても個人事業主の場合、いくつかの加入方法の中から選んで加入することができます。
それぞれ加入の条件や保険料の違いなどがありますので、ご自身の状況に応じて選んでいきましょう。
国民健康保険への加入
まず、個人事業主の健康保険といえばこちらの『国民健康保険』への加入が一般的になります。
こちらは市区町村が管理していますので、役所へ申請を行います。
納める保険料は前年の収入に比例していきますので、基本的には所得の10%程度になるものだと認識しておいてください(金額に上限があります)。保険料の計算方法は以下でもお伝えします。
所得に比例しているということなので、経費化をしっかりするなど所得を下げることで保険料を抑えることなどは可能です。
会社員時代から任意継続
前職の会社員時代に加入していた健康保険を継続している加入しておく方法もあります。
この場合、原則的に退職後20日以内の申請が必要で、最長2年間の任意継続が可能です。一時的措置に活用してください。
ただ、会社員時代は会社が半分折半してくれていた状態なので、個人事業主として独立後は会社員の頃よりも保険料も高くなります。
また、保険料支払いに1日でも遅れてしまうと、脱退扱いとなりますので注意が必要です。
手続き自体は簡単なので、独立したてで他の手続き等で追われている方はこちらの方法もおすすめです。
健康保険組合への加入
職種にもよりますが、各職種の保険組合が管理する健康保険組合に加入することができる場合があります。
保険組合の種類は100種類以上あり、ご自身の近い職種の中から調べていただく必要がありますが、組合によっては保険料も定額で国民健康保険よりも大幅に保険料を抑えることができる可能性があります。
定額の場合、だいたい月額2万円前後の保険料になっていることが相場ですので、所得が300万円超えてくる方(国保だと保険料月25,000円を超えてくる)は積極的に該当する健康保険組合がないかどうかを探してみることをおすすめします。
ぜひ、「ご自身の職業×健保組合」などで検索して調べてみたり、同業者に聞いてみるなどしてください。
家族の扶養に入る
ご両親や配偶者の方がすでに健康保険に加入しており、その健康保険を管理するところが扶養対象として認めてくれれば、こちらの方法は保険料を負担することなく健康保険に加入できることになります。
こちらも退職後5日以内の手続きが条件で、更に扶養として認められるには年収が130万円未満の目安、生計を一緒に立てているなどの条件もあります。
個人事業主というよりも主婦の方などが空いた時間などで収入を得ているような状況ですが、扶養家族として家族の健康保険に加入できれば保険料の負担も無くなりますので、該当しそうな方はお早めに手続きするようにしておきましょう。
個人事業主と会社員の健康保険の違い
上記いずれかの方法で健康保険に加入しますが、個人事業主になることで会社員の頃とは健康保険に関しても違いが出てきます。
会社員時代と個人事業主との健康保険を中心とした保険料・保障の違いを端的に言うと、「個人事業主の方が支払う保険料は高額になるけど、保障の方はあまり変わらない。いやむしろ少し保障が減る」ということです。
個人事業主になると税金ばかりに意識が行きがちですが、月々の保険料もけっこう侮れません。しっかり理解して賢く抑えて行きたいですね。
会社員時代は会社と折半だった
まず最初に知っておいて欲しいことが、『会社員時代の健康保険の保険料は会社が折半で払ってくれていた』ということです。
会社員時代、給与明細を見て「社会保険でまた引かれているよ~」などと思っていたかもしれませんが、それでも会社が出してくれていた後の金額なんですね。
個人事業主になったからには、当然会社にぞくしていませんのでそのようなことはできず、全部自己負担となります。
保険料は高くなる
では、実際にどれくらい金額が変わるかと言うと、会社員時代の健康保険料の倍以上になることも十分にあり得ます。
後で詳しく計算方法をお伝えしますが、国民健康保険の場合、だいたい所得の10%程度が保険料になってしまいます。
所得が300万円の方でも年間30万円程度。月々25,000円ほど。
そこまで病院に行かないのにこんなに毎月払っているとなると、なんだか馬鹿馬鹿しくなりますね。自治体によっては『国民健康保険税』と呼んで割り切っているようです。
保障が少し減る
支払う保険料が上がったからと言って保障がしっかりするわけではありません。
むしろ個人事業主は、会社員では利用できた『傷病手当金』や『出産給付金』が利用できませんので保障が少なくなったと言えます。
病気やけが、妊娠、出産などで一時的に働けなくなると、収入にも直接影響して困ってしまうのが個人事業主なのに、このような手当が無いことは手痛いです。
一家の大黒柱としてご家族を支えている個人事業主の方は特に、民間保険などで働けなくなった場合の保障も考えておきたいところです。
年金まで考えるとさらに保障が減る
今回は、健康保険の話中心なのでそこまで詳しくお伝えしませんが、個人事業主になると厚生年金からも外れ将来受け取れる年金の額も下がってきます。
その分、年金保険料は減りますので、社会保険全体の保険料で言えば会社員時代と同じくらいになってくるのですが、保障内容が圧倒的に悪くなります。
具体的にどれくらい違うのか?ということは以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】
「個人事業主と会社員の社会保険の保障と保険料の違い」
「個人事業主が入れる年金の種類と保険料|おすすめの老後の備え方」
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国民健康保険料の計算方法
それでは、こちらでは個人事業主が支払う健康保険の保険料の求め方について解説していきたいと思います。
なお、健康保険料の求め方は、年度・年齢・家族構成・運営先などによって違いますので、あくまでも今回の内容は参考程度に留めていただきますようお願いします。
今回は、世田谷区管轄の国民健康保険に家族3人構成の個人事業主の方が保険料を納める場合で計算していきたいと思います。
今回、「保険料の計算方法|世田谷区」を参考にして計算しました(東京23区は統一保険料方式のため計算方法はほぼ同じです)。
国民健康保険の構成
一言で「国民健康保険」といっても、以下の3つの内容から構成されています。結果的にまとめて保険料を支払うことになりますが、特に3番目の『介護分保険料』は年齢によって含まれない内容となります。
- 基礎(医療)分保険料
- 支援金分保険料
- 介護分保険料
年齢によって違う支払う保険料の構成
39歳未満 | A/B |
40歳~64歳 | A/B/C |
75歳以上 | 無し |
保険料の計算方法
国民健康保険の保険料計算方法は、『所得割額』と『均等割額』を合計した額を12分割して毎月支払います。
まず、『所得割額』を求めるために『賦課(ふか)基準額』を知っておかなければなりませんので、そちらから求めていきましょう。
賦課基準額の求め方
賦課基準額の基本的な計算式は
です。
もしも区分が違う複数の所得がある場合は、それぞれ基礎控除を引いていきます。例えば、個人事業主としての事業所得が主だけど、生計を立てるためにアルバイトなどで給与所得も得ていた場合は、それぞれに33万円を引く形です。
▼個人事業主の場合の所得額とは?
ここでいう個人事業主の所得とは、
の金額となり、確定申告書Bの『所得金額』の⑨合計に記載した金額となります。
よく勘違いしてしまうのですが、所得から各控除額を引く前の金額となりますので注意が必要です(青色申告特別控除なども引けません)。
各区分での計算式
国民健康保険の各区分での計算式は以下のようになります。
区分 | 所得割額 | 均等割額 |
基礎(医療)分保険料 | 加入者全員の賦課基準額×7.47% | 加入者×38,400円 |
支援金分保険料 | 加入者全員の賦課基準額×1.96% | 加入者×11,100円 |
介護分保険料 | 対象者の賦課基準額×1.52% | 対象者×15,600円 |
この掛けるパーセンテージや均等割額に関しては年度によって変わりますので、最新のものをチェックしましょう。
世帯での上限額
国民健康保険の保険料には世帯ごとに上限額が設けられていますので、上の計算方法で上限を超えた場合、それぞれの上限額が保険料となります。
区分 | 上限額 |
基礎(医療)分保険料 | 54万円 |
支援金分保険料 | 19万円 |
介護分保険料 | 16万円 |
こちらも年度によって変わります。
国民健康保険の計算方法の例
それでは、実際に上でお伝えした内容に沿って実際に計算をしていってみましょう。
- 本人=所得額400万円:42歳
- 妻=所得額100万円:36歳
- 子供=所得額0円:10歳
の3人家族を例にして計算してみましょう。
1.賦課基準額を求める
まず、所得額から賦課基準額を出していきます。基礎控除の33万円を引きましょう。
- 本人=367万円
- 妻=67万円
が基準額となります。
2.各区分の計算をする【所得割額】
上でお伝えした、
- 基礎(医療)分保険料
- 支援金分保険料
- 介護分保険料
のそれぞれの所得割額から求めていきましょう。『介護分保険料』は40歳を超えている「本人」しか該当しませんが、それ以外は全員分該当してきます。
基礎分保険料 | 434万円×7.47%=324,198 |
支援金分保険料 | 434万円×1.96%=85,064 |
介護分保険料 | 367万円×1.52%=55,784 |
合計 | 465,046 |
3.各区分の計算をする【均等割額】
こちらは、該当する人数分を掛けて計算します。収入が無いお子様の分も含まれます。
基礎分保険料 | 3×38,400=115,200 |
支援金分保険料 | 3×11,100=33,300 |
介護分保険料 | 1×15,600=15,600 |
合計 | 164,100 |
4.上限の確認と合計
上でもお伝えした
区分 | 上限額 |
基礎(医療)分保険料 | 54万円 |
支援金分保険料 | 19万円 |
介護分保険料 | 16万円 |
が各区分で超えていたら上限額に直しますが、今回の例では超えませんので【所得割額】と【均等割額】の合計をそのまま合わせます。
世帯所得や世帯人数が増えてきた場合は上限を超える可能性は高くなりますので、きちんと確認しましょう。
今回の例での合計を出すと
これを毎月払っていくとして月々【52,428円】が保険料となることが分かりました。
個人事業主が健康保険料を安くするために覚えておくこと
このように予想以上に高い個人事業主の健康保険料に対して心打ちひしがれている方も多いかと思いますが、工夫することで健康保険料を下げていくことは十分可能です。
こちらでは、個人事業主の方が健康保険料を下げていくためのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
所得を下げる
こちらは、健康保険だけでは限らず税金にも大きく関係してきますね。
個人事業主の場合、仕入れや経費の額をきちんと申告して所得を下げておきましょう。健康保険の場合、お伝えしたように所得割額によって所得と保険料がある程度比例しています。
「これって経費にできるの?」と悩んだ分に関しては、いったん領収書はもらっておき、税務署や税理士に相談してみていいと思います。
保険組合に加入する
上でもお伝えしましたが、職種によっては保険組合が存在し、そちらの方が保険料も安くなる傾向にあります。
所得が300万円を超える方は必ず1度探してみてくださいね。月額2万円くらいの保険組合も結構ありますよ。
国民健康保険から変えるだけで、年間保険料が10万円以上安くなるケースも往々にしてあります。
ご自身で行っている業務内容で加入できそうな保険組合がないかどうかをインターネットで調べてみたり、同業者に聞いてみるなどしてみましょう。
1年or半年分まとめて前納する
こちらも上でお伝えしましたね。保険料をまとめて支払うことで保険料も1~3%程度安くなります。
著者個人的にですが、こちらは金額よりも手間が省けるので可能な方はおすすめではあります。
保険料が安い市区町村に引っ越す
住民税に関してはどこに税金を納めようがそこまで大きな差がないのですが、この健康保険に関しては運営する市区町村によって大きく違ってきます。
同じ家族構成・年収でも市区町村が違うだけで年間10万円違うなんてことも十分にあります。
もちろん、仕事や学校の関係で簡単には引っ越しできないでしょうが、選択肢として長期的に考えておくのはありでしょうし、最近ではインターネットだけでお仕事をされている個人事業主の方も多いですしね。
健康保険料に関しては、以外に都市部が安かったりします。気になる方は「国民健康保険計算機」を参考に比較していただければと思います。
法人化する
保険料を抑える最終手段として、事業を法人化する方法もあります。
法人化することによって、それまで個人事業主だった方も給与所得者になり、個人としての保険料の軽減にもなりますし、雇用保険や労災保険などの会社員と同じ社会保険も受けることができます。
もちろん、保険料を抑えるためだけに法人化するにはデメリットもありますのでお勧めではありませんが、他の要素とも併せて検討する時がくるかもしれません。
個人事業主の健康保険料支払い方法
保険料が分かったところで、今度はどうやって保険料を支払うか?という話ですね。こちらも会社員時代は給与から天引きされていましたのでそこまで気にしていたことではないでしょうが、個人事業主の場合はご自身で支払う必要があります。
こちらでは国民健康保険の支払い方法についてご説明していきます。
支払い方法は多種多様
健康保険の支払い方法は税金などと同じく、基本的には納付書が送られてきてそれに従い
- コンビニ払い
- 銀行などの窓口での支払い
- 窓口での支払い
- ネットバンキング
の方法で支払っていくことができます。
また、口座振替によって毎月自動的に引き落とす方法もありますが、こちらは事前に申込書を提出する必要があります。
保険料は所得控除になる
支払った保険料は、その年分の控除として確定申告で社会保険料控除にすることができます。
上の計算例でも分かったように、国民健康保険の保険料は年間数十万円の高額なものとなってきます。
翌年の健康保険料の所得には関係してきませんが、税金の対象となる課税所得を下げることができますので、必ず支払ったことが分かる領収書などは残しておき、きちんと申告するようにしましょう。
まとめて支払うことで保険料が安くなる
こちらは資金に余裕がある方に限られますが、保険料をまとめて支払うことで保険料を安くすることができます。民間保険でも同じような仕組みですね。
ケースバイケースではありますが、おおむね1~3%程度安くなります。1万円前後違ってきますし、毎月支払う手間も減りますので、可能な方はまとめて支払ってもいいかもしれませんね。
1年分or半年分と選択できます。
まとめ
個人事業主の方の健康保険については、自分で申告して支払う必要があります。
基本的に保険料も上がり、会社員時代の恩恵を感じる部分の1つでもありますが、工夫次第で保険料を抑えることは可能です。
さらに言えば、体が資本の個人事業主の方も多いでしょうから、万が一に備えて安くできた健康保険料の分で民間保険への加入も検討してみてください。
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