個人事業主になったら、今まで会社員では給料天引きされていた年金も自分で納めなければなりません。
支払う保険料は低くなる場合がほとんどですが、その分将来受け取れる年金が大幅に減ります。
また、会社員とは違い退職金などの福利厚生も手薄になっている個人事業主だからこそ、年金だけに頼らない老後の資金作りも頭に入れておきたいところです。
今回は、主に個人事業主になったばかりの方に対して、年金の手続き方法や年金以外の老後に対する備えについて解説していきたいと思います。
個人事業主の場合の年金についてしっかり理解していただき、将来の為にも賢く準備していただければと思います。
この記事で分かること |
❶ 個人事業主と会社員の年金の違い ❷ 個人事業主が加入できる年金の種類 ❸ 個人事業主が加入する年金の保険料と計算方法 |
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個人事業主と会社員の年金の違い
まず初めに、会社員から個人事業主になることで、年金の保険料や保障(将来の受取額)にどのような違いが出てくるのでしょうか。
簡単に言うと、会社員時代は『基礎年金(国民年金)+厚生年金』に加入していました。これが個人事業主になると『基礎年金(国民年金)』のみになります。
支払う保険料こそは低くなりますが、その分将来の受け取ることができる年金の額が大きく下がってくるのです。
それぞれもう少し詳しくご説明していきます。
支払う保険料は下がる
まず、個人事業主になると年金に対する保険料が下がります。会社員時代よりも半分近く減っている場合がありますので、「やった!安くなった」と喜びたくなるかもしれません。
しかし、支払った保険料が下がったということは受け取る年金額も下がってきますので、手放しで喜ぶことはできません。
会社員の保険料は会社と折半
また、会社員時代は従業員年金保険料を会社が半分程度を払ってくれていました。
将来的に返ってくるであろう年金分の事を考えると、コスパ的な部分で会社員の方が非常に恵まれていたのです。
受け取る年金は圧倒的に下がる
個人事業主になると厚生年金は脱退することになります。つまり、将来会社員一筋だった方のほうが途中で個人事業主になった方に比べると、圧倒的に多くの年金を受け取れることになります。
将来の年金受給額についてはどうなるか分かりませんが、最近の年金受給実績は
- 国民年金:5万5千円
- 厚生年金:14万8千円
となっています。
個人事業主は厚生年金が無いので、単純に将来の受取額が1/4に下がってしまうということになります。
成人してからいきなり個人事業主にはならず会社員を経験してから~という方がほとんどでしょうから、そのまま受給額が1/4に下がるということは少ないでしょうが、これほどの違いがあるということは念頭に置いておきましょう。
国民年金以外の蓄えもしっかり考える
このように、ただでさえ将来問題視されている国の年金制度の中で個人事業主の年金についてはさらに手薄だということが言えます。
個人事業主の方が、60~65歳を超えても働き続けなくて良いように、将来のこともしっかり考えた蓄えや資産運用をしていかなくてはなりません。
次の項目では個人事業主の方が加入できる年金についてご紹介していきますので、最低限の加入だけではなく、追加の年金に加入したり年金以外資産運用の方法をしっかり考えていきましょう。
年金以外にも変わる社会保険
また、会社員から個人事業主になった時に変わってくる社会保険は年金だけではありません。
特に大きな変化があるものが、健康保険(国民健康保険)です。
端的に言うと、個人事業主の健康保険は保険料が倍近くにまで増えてしまうのですが、保障内容については少し手薄になります。
収入が増えてくると高額になってしまいがちな国民健康保険料を抑える方法や、具体的な保険料の計算補法などを解説していますので、気になる方や知らなかった方は一度ご覧ください。
【関連記事】
「個人事業主と健康保険|加入方法と保険料の計算方法や保険料減のコツ」
「個人事業主が知っておくべき社会保険の仕組みと保険料」
個人事業主が加入できる年金の種類
それでは、個人事業主の方はどのような年金に加入するのか?できるのか?ということから知っておきましょう。
個人事業主は『国民年金(基礎年金)』に加入が義務付けられていますが、お伝えにように保障が少なくなりますので他の年金制度などの追加加入を検討していきます。
国民年金|加入が義務付けられている
まず、個人事業主だろうが何だろうが20歳~60歳の方であれば必ず加入する必要があるものが国民年金です。
会社員時代は「第2号被保険者」だったのですが、個人事業主になることで「第1号被保険者」に変わります。
会社員時代との年金に関する大きな違いは、会社員の時は国民年金と併せて厚生年金も加入していたことです。個人事業主になることで厚生年金は未加入になります。
結果的に保険料も安めにはなるのですが、その分将来受け取れる年金の額も少なくなってしまうのです。個人事業主の方は、その分のカバーを以下のような方法で補っていきます。
付加年金|国民年金のちょっとした追加
国民年金だけでは不安という方に対して、まず付加年金というものがあります。名前の通り、月額数百円の保険料を追加することで受給する年金額も増やす方法です。
参考:「付加保険料の納付のご案内|日本年金機構」
国民年金基金|追加の年金制度
また、受給できる年金額が少なくなってしまいがちの個人事業主のために国民年金基金というもものがあります。こちらは個人事業主のための厚生年金のようなものだと思っておいてください。
保険料も増えますが、将来受け取れる年金額も多くなるのです。
ただ、国民年金基金に加入する場合は上でお伝えした付加年金(付加保険料)は納付できなくなりますので注意しましょう。
個人型確定拠出年金|各金融機関が運用する個人型の年金
最近では『iDeCo(イデコ)』という呼ばれ方でも知られている個人型確定拠出年金ですが、こちらも元々厚生年金に加入できず年金に関して手薄だった個人事業主のための制度でもありました。
上の国民年金基金と併せて合計で月額68,000円まで保険料を設定することができ、なんといっても支払った保険料は全額所得控除の対象になることが大変嬉しいですね。
つまり、節税しながら将来のお金も積み立てていくことができるということです。
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個人事業主の年金の保険料と支払い方法
個人事業主の方は、ご自身で年金も支払っていかなくてはなりませんので、きちんと月額と支払い方法についても知っておきましょう。
国民年金の保険料と支払い方法
まずは加入が義務付けられている国民年金からいってみましょう。
国民年金の保険料
国民年金の保険料に関しては、年度での違いこそはありますが、収入等に関係なく固定されています。
国民年金の1カ月当たりの保険料は平成29年度で16,940円となっています。
国民年金の支払い方法
国民年金の支払い方法は、
- 口座振替
- 現金払い
- クレジット
- コンビニ払い
- ネットバンキング
など、様々な方法で支払うことが可能です。
参考:「国民年金保険料|日本年金機構」
▼2年前納で保険料をお得に!
前納といって、まとめて保険料を先に支払っておくことで少しお得に保険料を抑えることも可能です。
国民年金の場合2年前納があり、約1万5千円ほど(約1ヶ月分)安くなります。
合計40万円近く一度に支払う必要がありますが、納付の手間も省けますし資金に余裕がある方は検討してみてもいいでしょう。
国民年金基金の掛金と支払い方法
こちらでは国民年金基金の掛金と支払い方法についてご説明します。
国民年金基金の掛金
国民年金基金の月額掛金は、民間の生命保険料のように年齢やプランによって変わってきます。
おおよそ月額5,000~50,000円といったところです。詳しく知りたい方は、以下のリンクからシミュレーションしてみてください。
参考:「掛金月額表|国民年金基金」
国民年金基金の支払い方法
国民年金基金の支払い方法は、基本的に口座振替による月々の引き落としのみです。毎月1日に引き落としされますので、それまでに掛金がきちんと引き落とされるように入金しておきましょう。
個人型確定拠出年金の掛金と支払い方法
こちらでは、個人型確定拠出年金について掛金と支払い方法についてご説明していきます。
個人型確定拠出年金の掛金
個人型確定拠出年金の掛金は、月額最少5,000円から最大68,000円まで自由に設定することができます。
上でもお伝えしたように、国民年金基金にも加入している方は国民年金基金も併せて月額上限が68,000円です。
また、掛金は1年ごとに変更することも可能ですので、懐事情が売上によって変わりやすい個人事業主の方でもありがたいですね。定期的に見直して無理のない掛金に設定しましょう。
個人型確定拠出年金の支払い方法
個人型確定拠出年金は、銀行から証券会社まで様々な金融機関で取り扱っています。その金融機関が対応している支払方法で掛金を支払っていきましょう。
個人事業主の年金に対する控除と税金
こちらでは、個人事業主の年金と支払った保険料(掛金)に対する控除についてご説明します。
このことを知っておくことで、将来のためにお金を積み立てながらもその年の税金も上手く抑えて行くことできますので、個人事業主の方であればぜひとも理解しておきましょう!
保険料(掛金)は全額控除になる!
まず、支払った保険料や掛金に関しては、経費として計上することはできませんが、社会保険料控除や小規模企業共済控除として後の確定申告時に控除することができます。
この控除に上限などはなく、実際に支払った金額全てを控除することができます。
年金関係以外でも健康保険料も控除の対象となりますので、きちんと支払ったことが分かるものや、11月頃に送られてくる控除証明書をきちんと保管しておきましょう。
個人型確定拠出年金を始めた場合の節税シミュレーション
上でご説明したように、個人型確定拠出年金の掛金は上限まで自由に設定することができます。
そして、小規模企業共済控除には上限がありません。すなわち、事業資金などに余裕がある年は、個人型確定拠出年金を高めに設定して社会保険料控除を受け、所得を下げるというテクニックを使って税金を抑えることもできます。
ざっくりになりますが、簡単にシミュレーションしてみましょう。
年間最大816,000円を個人型確定拠出年金の掛金に払った場合
まず、個人型確定拠出年金と国民年金基金の月額上限の68,000円を1年間最大限払い続けると年間816,000円が最大掛金になります。
年間816,000円に対する節税効果
他の経費や控除を引いた後の課税所得が500万円の人がいたとしましょう。もしもこの方がこれ以上何もしていないと500万円に対して、住民税10%/所得税20%/事業税5%の合計約35%が税金となります(ざっくりですみません)。金額に直すと175万円の税金です。
もしもこの方に年間816,000円の控除が加わると816,000円は全て控除になり、4,184,000円が課税対象になります。
これに対して税率35%を掛けたとすると、1,464,400円。何もしなかった時に比べて285,600円の税金の差です。
それを30年続けると…?
では?それを30年続けたとすると?なんと合計856万8,000円の税金の違いです。
ざっくりしたシミュレーションなので、厳密に細かくやると違いは出てくるとは思いますが、これはかなりインパクトのある数字ですね。一生分の車を買い替えることができます。
さらには、あくまでも年金なわけですから60歳以降に積み立てた分は積み立てた分で受け取ることができます。
さらに利率が良い個人型確定拠出年金を探し出せば、受け取れる金額も今まで積み立てた分よりも多くなるのです。
会社員よりも年金が手薄な個人事業主の方には、税金を抑えながらも年金を強化できる個人型確定拠出年金はぜひともおすすめですね。
年金以外にも個人事業主におすすめの『小規模企業共済』
年金制度とは少し違いますが、将来のお金を蓄えておきたい方に『小規模企業共済』という制度をご紹介しておきたいと思います。
小規模企業共済とは、中小機構が運営する小規模企業や個人事業主向けの退職金や年金対策のための共済制度で、従業員5~20名以下の小規模企業の経営者や役員であれば基本的に加入ができます。
掛金には月額最大7万円という上限が設けられていますが、小規模企業共済も支払った掛金を全額控除対象にすることができるので節税効果も高いです。
上でお伝えした年金制度と併せて加入しておくことで、さらに将来のお金を確保しながら目の前の税金を抑えることができるということですね。
【関連記事】
「小規模企業共済とは?メリット・デメリットと加入の方法」
小規模企業共済の掛金
小規模企業共済も個人型確定拠出年金と同じく自分で掛金を設定することができます。掛金は1,000~70,000円の範囲で自由に設定が可能。
ただ、高めの掛金から後で減額すると損をしてしまうこともあり得ますので、まずは無理のない範囲内で掛金を設定して徐々に金額を上げていくことをおすすめします。
【関連記事】
「小規模企業共済の掛金はいくら?」
小規模企業共済控除による節税効果
小規模企業共済も掛金を全額控除にすることができますので、節税効果もかなり高いです。
掛金上限は月額7万円となっていますが、仮に上限いっぱいの年間84万円を支払って控除にしたとすると、だいたい20~30万円分の税金を下げることができる計算になります。
個人事業主であればほとんどの方が加入資格を満たしていますので、資金に余裕があるという方はぜひ前向きに検討してみてください。
【関連記事】
「小規模企業共済の控除による節税効果と控除の受け方」
まとめ
いかがでしょうか?今回の大事なポイントをまとめると、
- 個人事業主の方も国民年金への加入は強制になり、第1号被保険者となります。
- 会社員時代よりも受け取れる年金が減るので個別での加入も検討しましょう。
- 個人型確定拠出年金は節税しながら年金も積み立てられるのでおすすめ。
- 資金に余裕がある方は小規模企業共済も要検討。
です。賢く老後に備えていきましょう!
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