個人事業主の方にとって避けては通れない手続き『確定申告』。特に個人事業主になりたての方は、「何をどうすればよいのか?」分からないことばかりだと思います。
今回は、個人事業主のために知っておきたい確定申告の基礎知識や提出書類・手続きの流れなどについてご説明します。
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個人事業主が知っておくべき確定申告の基礎知識と必要書類
早速ですが、個人事業主の方が最低限知っておきたい確定申告の基礎知識と必要書類からご説明します。
確定申告を行う時期
確定申告を行う期間は、毎年2月16日から3月15日です。2019年分の確定申告する場合、2020年2月18日~3月15日が確定申告の期間となります。
この時期から遅れて確定申告をしても受け付けてはもらえますが、追徴課税といって余計な税金が加算されてしまうので、期限内に申告し終わるように準備していきましょう。
※2020年の確定申告は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、4月16日(木)まで延長となりました。国税庁 |
前年1月1日から12月31日までの所得を申告する
確定申告を行う時期は2月16日から3月15日ですが、申告対象となる時期は前年の1月1日から12月31日分です。例えば、2020年3月に行う確定申告では、2019年1年分の所得を申告します。
確定申告書の提出は2月16日からですが、それ以前の年明けの段階から、前年の収支や帳簿をまとめたり、ある程度の準備をしておくと直前に慌てずに済むでしょう。
確定申告の期限と所得税の納税期限は同じ
また、確定申告で確定した所得税と復興特別所得税の納付期限も、原則として3月15日までとなっています。所得税は個人事業主が関わる税金の中でも一番税率も高く、基本的に一括納付になるので、ある程度の納税額をあらかじめ用意しておく必要があります。
例えば、経費など引いた後の課税所得が300万円の方は、だいたい20万円前後が所得税になります。後で所得税の基本的な計算方法もご説明しますので、ある程度の所得税は予測して準備しておきましょう。
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、所得税の納付も4月16日(木)まで延長となりました。国税庁 |
【関連記事】
「個人事業主が納める税金4種類の計算方法と納税方法・納税期限まとめ」
確定申告の種類と提出書類|個人事業主におすすめの方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があって、提出する申告書もAとBに分かれます。個人事業主におすすめの確定申告の方法と、方法に応じた提出書類についてこちらでご説明します。
白色申告と青色申告の違い|個人事業主は青色申告がおすすめ
確定申告には白色申告と青色申告と2種類の申告方法があり、どちらか選ぶことができます。
- 白色申告=簡単な確定申告の方法
- 青色申告=少し難しい確定申告の方法
特徴を簡単にお伝えすると上のようになります。これだけ見ると、「じゃあ、簡単な白色申告が良い」のですが、それだとわざわざ青色申告にする意味が無いので、青色申告にするメリットが多くあります。
青色申告では、控除を多く受けたり専従者給与を経費にして所得を下げることができ、結果的に税金も数十万円分は変わります。
個人事業主の確定申告では、いかにして税金を下げていくかも重要ですので、青色申告が適していると言えますね。ちなみに青色申告では事前申請が必要になるので要注意です。
【参考記事】
「青色申告をした場合の節税効果」
確定申告の提出書類
「国税庁の確定申告用紙一覧ページ」を見ると、色々な書類が用意されていて、どれを使えばいいのだろう?と悩んでしまいます。個人事業主の方なら基本的に以下の書類を記入して提出すれば良いので、そこまで種類は多くありません。
白色申告 | 青色申告 |
|
|
実際に各書類を見てみると今度は、「どこに何を書けばいいのか?」という問題にぶち当たります…。確定申告書の書き方は別記事で解説していきますし、会計ソフトを使っていけばある程度埋められるようになります。
個人事業主は確定申告書Bを使う
確定申告書にはAとBがありますが、個人事業主の方は確定申告書Bを使ってください。確定申告書Bは事業所得がある方向けですので、自分で事業をしていてそこからの所得を得ている個人事業主は確定申告書Bですね。
一方で、確定申告書Aは会社員の方が株の配当など一時的な所得があったり、退職後に確定申告をする時に使います。
【関連記事】
「確定申告の種類の違いと選び方・必要な書類」
確定申告で提出しなくてもいいけど作成・保管しておく書類
確定申告に必要な書類は、確定申告書と決算書の2種類が基本だとお伝えしましたが、提出書類以外に保管しておく必要がある書類もあります。帳簿と領収書です。
白色申告 | 青色申告 | |
保管書類(7年間) | ・帳簿 (現金出納帳、預金出納帳、買掛帳、売掛帳、経費帳、固定資産台帳) |
・帳簿 (仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、預金出納帳、買掛帳、売掛帳、経費帳、固定資産台帳) ・領収書、請求書など |
保管書類(5年間) | ・領収書、請求書など |
白色申告と青色申告で若干違いますが、それぞれ上のような帳簿を作成・保管する必要があります。帳簿に関する記事もいくつか書いていますので、徐々に知識を身に付けていただければと思います。
【関連記事】
「青色申告で必要な帳簿の種類」
「補助簿の種類や必要性」
「複式簿記の重要性とその書き方や帳簿の作り方」
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確定申告が必要になる個人事業主の所得と会社員との違い
個人事業主になりたての方は、まだまだ所得(売上)が低い段階で、「そもそも確定申告した方が良いのか?」と、悩んでいる方も多いでしょう。
主に所得が低い方や開業したての個人事業主の方のために、確定申告が必要になる所得額と会社員時代との違いについてご説明します。
38万円の所得を超えると確定申告は必要
確定申告は、基本的に所得金額が38万円を超える人に申告の必要があります。開業したてで所得金額が38万円以下の個人事業主は、確定申告をする義務はないことになります。
所得とは=売上―経費ですので、開業のために準備をして多くの費用がかかった方は、売上が多くても所得は低いことも考えられます。
ちなみに、この38万円という金額がどこから来たかというと、基礎控除額の38万円です。確定申告では全員一律で38万円が控除されることが決まっているので、所得金額が38万円の場合、所得金額38万円―基礎控除額38万円=課税所得金額0円となります。結果として所得税を納める必要はないということで、確定申告をする義務はないわけです。
赤字でも確定申告をした方が良いケース
仮に売上よりも経費が多かった場合の赤字のケースでは、確定申告をした方が良いケースが多くなります。理由としては、青色申告にすることで赤字を3年間繰り越しできるからです。
上でも「個人事業主は青色申告がおすすめ」とお伝えしましたが、赤字の場合のメリットもありますので、早めに切り替えることを検討しましょう。
青色申告だと3年赤字が繰り越せる
青色申告の場合に限り、3年間の赤字の繰り越しができます。つまり、赤字と黒字の相殺ができるということです。
その年の収支 | 相殺後の課税所得金額 | |
今年 | △300万 | |
翌年 | +100万 | △200万=△300万+100万 |
2年目 | +100万 | △100万=△300万+100万+100万 |
3年目 | +300万 | +200万=△300万+100万+100万+300万 |
例えば、今年が300万円の赤字だとします。翌年が100万円の黒字ですが、相殺すれば△200万円と赤字です。つまり所得税は発生しません。
2年目も100万円の黒字ですが、まだ△100万円と赤字ですね。そして、3年目に300万円の黒字になり、相殺すると+200万円となりました。青色申告にすることで3年目に初めて所得税が発生するわけです。
赤字の申告をしていなければ、翌年の100万円の所得があった年から所得税を納める必要があります。
個人事業主と会社員の確定申告の違い
会社を退職して初めて確定申告をする個人事業主の方も多いでしょう。会社員時代は確定申告をしたことがない方が大半でしょうが、確定申告の代わりに会社が年末調整をしてくれていました。
年末調整によって次年度の納税額が決まり、税金は給与天引きされていたので、確定申告や納税などの本来自分でやらなければならないことは会社を通してやってくれていたのです。
個人事業主になったのであれば、会社のような代わりに行ってくれる人がいませんので、自分で申告から納税までする必要があるのです(費用を払って税理士に代理人になってもらうことは可能です)。
【参考記事】
「確定申告と年末調整の違いと退職後の確定申告の特徴」
個人事業主が確定申告するまでの準備
確定申告のことはおおよそ分かっていただけたと思いますので、こちらでは個人事業主が確定申告に向けてどのような準備をしていけばいいのかをご説明します。
白色申告か青色申告を決める
まず、白色申告と青色申告のどちらか申告方法を決めましょう。
白色申告か青色申告によって、用意する書類も変わってきます。帳簿作成が簡単なのは白色申告ですが、上記でもお伝えしましたが青色申告は節税などのメリットも多いので、その辺も考えて納得のいく方を選びましょう。
青色申告は事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要で提出期限がありますので、詳しくは下の記事も参考にしてみてください。
【参考記事】
「青色申告承認申請書の提出期限と書き方・青色申告の基礎知識」
税金や記帳に関する基礎知識を身に付けておく
初めて確定申告をする方は、分からないことばかりで何をどうすれば良いのかすら分からないと思います。少しずつで良いので、まずはこのようにして確定申告に関する知識を身に付けていきましょう。個人事業主が特に知っておくべきことは以下の4つです。
確定申告で必要な帳簿は作成しておく
上でもお伝えしましたが、確定申告をするにあたって帳簿の作成義務があります。提出の必要性はありませんが、5~7年の保管義務があり、稀に税務署から調べられることもあるでしょう。
白色申告 | 青色申告 | ||
記帳方法 | 簡易簿記 | 簡易簿記 | 複式簿記 |
控除額 | なし | 10万円 | 65万円 |
作成義務がある帳簿 | ≪補助簿≫ ・現金出納帳 ・預金出納帳 ・買掛帳 ・売掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
≪補助簿≫ ・現金出納帳 ・預金出納帳 ・買掛帳 ・売掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
≪主要簿≫ ・仕訳帳 ・総勘定元帳≪補助簿≫ ・現金出納帳 ・預金出納帳 ・買掛帳 ・売掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳など |
種類も多く聞いたことが無い帳簿の名前ばかりでしょうが、基本的な考え方が分かれば事業用の家計簿のような物と思えてきます。ただし、全て手書きになると相当な作業量になるので、会計ソフトを使いながら作成していきましょう。
それぞれの帳簿の内容や作り方についてはリンク先を参考にしてください。
勘定科目の意味をある程度理解し、経費の抜け漏れを防ぐ
帳簿を作成していると、『勘定科目』という言葉を目にするようになります。『水道光熱費』や『旅費交通費』など、何の費用かが分かる科目のことです。
ただ、個人の帳簿作成では、そこまで厳密に勘定科目を気にする必要はなく、「これは経費にできるのか?」をしっかり判断や意識すると良いでしょう。経費にできるものはしっかり経費にすることで税金を抑えることができます。
【参考記事】
「勘定科目とは?勘定科目を選ぶ時の注意点とよく使う勘定科目」
個人事業主に重要な家事按分で節税する
個人事業主が経費について考える上で、とても大事になるものが『家事按分』です。家事按分とは、事業用とプライベート用どちらでも使っている費用の一部を経費にすることで、家賃や携帯電話の利用料金などが挙げられます。
例えば、自宅で少しでも作業しているのであれば、一般的に家賃の3~5割程度を経費にすることができます。個人事業主であれば、少なからず自宅作業もあるでしょうから、家事按分のことはしっかり覚えておきましょう。
【参考記事】
「家事按分とは?家事按分できる支払いや比率の計算方法・帳簿の付け方」
所得税の計算方法を理解してある所得税を程度予測しておく
個人事業主が大きく関わってくる税金が所得税です。所得税は『累進課税』といって、所得が多くなれば税率も高くなる仕組みです。
実際の確定申告の際には細かく計算していきますが、大まかな計算方法は事前に知っておくと良いでしょう。上でもお伝えしましたが、所得税の納付期限は確定申告と同時なので、所得税分はある程度準備しておくべきですからね。
所得税の計算方法を簡単にまとめると上図の通りです。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
【参考記事】
「所得税の計算方法【個人事業主の場合】計算例や所得税を下げるポイント」
事業用財布と銀行口座を作る
確定申告で作る帳簿を作りやすくするために、個人用財布と事業用の財布を分けておきましょう(銀行口座やクレジットカードも同様に)。
もし事業と個人用の口座が一緒になっていて、広告費の支払い(経費)もスポーツジムの料金(個人的支払い)も同じ口座から引き落とされていたとすれば、本来書く必要がない個人的な支払いも帳簿に書く必要が出てきます。ようするに、帳簿を付ける手間が増えてしまうということです。
資金の管理もやりにくくなってしまいますので、個人事業主になったのであれば事業用・プライベート用の資金管理は分けるようにしましょう。
領収書の保管と帳簿の作成
繰り返しますが、確定申告をする個人事業主は帳簿の作成義務があります。帳簿は日々の収支を記録するものとなりますので、確定申告前にまとめて行うのではなく、なるべく毎日(もしくは週1、月1)で定期的に付けておくことをおすすめします。
日々の仕訳をしっかりとやっておく
経費として支払った分の領収書はきちんと整理して保管しておき、売上の入金や経費での出金がある場合には帳簿に付けていきまましょう。
確定申告の直前に慌てて領収書を書き集めたり、会計ソフトに取引内容を打ち込んだりする方が多いですが、日ごろからある程度処理しておく習慣を付けておけばそこまで苦にはなりません。
週1~月1など頻度は取引量にもよりますが、事前に準備しておけば確定申告の時期に慌てなくて済みます。
今のご時世、手書きで帳簿を付ける方は減ってきており、多くの方が会計ソフトに数字を打ち込むだけで終わらせています。営業後にちょっとパソコンを触って数字入力するだけで済みますので、習慣付けもしやすいですね。
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個人事業主が確定申告でやることまとめ
実際に確定申告をする際、いつ・何を・どこに申告したらいいのか、確定申告の手続きの流れを説明したいと思います。
確定申告を行う時期と準備期間
上でもお伝えしましたが、確定申告を行う期間は翌年2月16日~3月15日です。(曜日の関係上、多少前後することもある可能性もあります。)この期間内ならいつでも申告可能です。
実際に作業し始める時期の目安
実際にいつから確定申告の準備をし始めるかと言うと、年が明けたころから開始し始めることがベストです(仕訳などの日々やることは年内に終わらせておくのが良い)。年が明ければ、売上高も使った経費も後から変更になることもほぼないので、早めの準備ができます。
一通り用意ができた段階で、合っているか不安な方は税務署などに相談してみます。年が明けても2月16日以前であれば、税務署も比較的に空いていて相談しやすいでしょう。
逆に、ギリギリまで確定申告の準備をしていないと、他の申告者も増えてきますので、税務署も混んで、問い合わせも時間がかかって…と、余計に時間がかかってしまいます。
必要書類の記入と提出
繰り返しますが、白色申告と青色申告の提出書類は以下の通りです。
白色申告 | 青色申告 |
|
|
上記でも説明しましたが、帳簿や領収書などは保管しておくだけで提出の必要はありません。
確定申告書類の提出方法
確定申告の期間を確認し、提出用の書類も準備できたら、あとは実際に提出するだけですね。
それでは、確定申告の書類の提出方法を3つご紹介します。
①税務署に直接持っていく
あらかじめ書類を完成させて持って行ってもいいですし、税務署で記入することもでます。
税務署で記入する場合は、署員に聞きながら記入できるというメリットもありますが、確定申告の時期はかなりの混雑が予想されます。
②税務署に郵送する
確定申告書は信書に該当するので、ゆうパックや宅急便などではなく、日本郵便からの郵便やレターパックで送りましょう。
③e-Taxを使う
国税庁が運営しているオンラインの国税電子申告・納税システムです。
わざわざ税務署に行く手間も省けますし、自宅で簡単に申告できるというメリットもありますが、電子証明書(マイナンバーカードなど)とその電子証明書を読み込むICカードリーダーを用意しておく必要があります。
確定申告を簡単に終わらせたいなら会計ソフトが便利
度々お伝えしていますが、確定申告の負担を少しでも軽減したいのであれば、会計ソフトの利用を前向きに検討しましょう。帳簿や申告書類の作成の負担や人為的なミスを減らすことができます。
確定申告を税理士に依頼するとなれば10万円程度がかかりますが、会計ソフトでは月額1,000円程度で利用可能です。従業員を雇っていない個人事業主の方であれば、会計ソフトがおすすめですので、まずは無料プランからお試しください。
【参考記事】
「個人事業主に会計ソフトは必要?おすすめ会計ソフトと選び方」
まとめ
個人事業主には確定申告は避けて通れません。今回お伝えした内容をまとめると、以下の点が重要になります。
- 確定申告は2月16日~3月15日に所得と納税額を税務署に知らせるために行う
- 個人事業主は青色申告がおすすめ(青色申告には事前申請が必要)
- 確定申告には提出用の書類だけでなく、保管義務がある帳簿も作成する必要がある
- 税金を抑えるためには経費の抜け漏れを忘れずに!
- 確定申告の時期ギリギリに開始するのではなく、早め早めの準備を!
- 確定申告を簡単に済ますためには会計ソフトがおすすめ
初めて確定申告となればかなり大変になりますが、税務署や商工会に相談したり会計ソフトを利用することで、負担も徐々に減っていくことでしょう。
確定申告まで終わらせることができれば、個人事業主としてまた1つ成長できるでしょうから、ぜひ前向きに準備を進めていってください。
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